現在の実務では、本人が多額の預金を有する場合は、親族が成年後見人になることを希望していても、まず専門職が後見人になって預金の大部分を信託銀行に信託するという取扱いになっています。これを後見制度支援信託と言います。
方式としては、①最初に専門職後見人を選び、信託後に親族後見人を選ぶというやり方(リレー方式)と②専門職後見人と親族後見人を同時に選ぶというやり方(権限分掌方式)があります。いずれも専門職後見人は信託後に辞任することになります。
いくらから後見制度支援信託が適用になるかは家庭裁判所によって異なりますが、名古屋家庭裁判所は1200万円以上としています。
一例として本人の普通預金が2300万円だとすると、まず専門職後見人が2000万円を信託します。すると預金に300万円が残ります。その後、親族後見人は300万円の普通預金を管理します。もし本人の支出(施設利用料など)が月25万円で、収入(年金)が月15万円だった場合は、信託銀行から月10万円を送金されるようにすることもできます。
後見制度支援信託導入前は親族が望めば後見人に就任できましたが、現在ではまず専門職後見人を選ばなければならない場合があるということに注意が必要です。
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