平成27年に相続税の基礎控除がそれまでの6割になった結果、相続税の申告が必要な相続が増加しました。それまで相続税の基礎控除を超えるケースは例外的だったのが、もはや例外とはいえなくなったような気がします。そこで私はこれからは相続開始の時点から相続税の確定申告が必要かどうかを意識することが必要であると考えています。
まず上述した相続税の基礎控除について説明します。相続税は基礎控除を超過した相続財産にかかる税金です。相続財産が基礎控除以下であれば相続税はかかりません。相続税の基礎控除は、3000万円+600万円×(相続人の数)で計算されます。例えば夫が亡くなり、相続人が妻と子2名だった場合は相続人は3人ですので、基礎控除は、3000万円+600万円×3=4800万円です。そこで相続財産の合計が4800円以下であれば相続税はかかりません。
ちなみに平成26年以前は基礎控除は5000万円+1000万円×(相続人の数)でした。つまり先の例では5000万円+1000万円×3=8000万円だったわけです。4800万円と8000万円ではえらい違いです。
相続財産が相続税の基礎控除以下であれば相続税はかからないので、相続税の確定申告は不要です。これに対して、相続財産が相続税の基礎控除を超過する場合は相続税の確定申告が必要です。相続税には様々な減額の特例があるので、相続税の基礎控除を超過しても相続税がかからないことも多いのですが、特例の適用には確定申告が必要です。
相続税の確定申告には期限があって、相続発生から10ヶ月以内とされています。相続は、①相続財産の調査、確定 ②相続財産を相続人でどのように分けるかの決定(これを「遺産分割協議」と言います) ③遺産分割協議に従った不動産の名義変更や預金の解約など の3ステップがありますが、相続税の確定申告をするためには少なくとも①②のステップが10ヶ月以内に完了する必要があります。もちろん遺産分割協議が成立する前にだれがいくらの相続税を負担するかの話し合いも必要です。これらに対し、相続税の確定申告が不要である相続はこの3ステップに期限はありません。
私は今後は相続には相続税の申告が必要な相続と不要な相続の2種類があると考えるのがわかりやすいと思います。そして申告の要否で相続の進め方が変わってくるので、相続開始の時点から相続税の確定申告が必要かどうかを意識することをお勧めします。
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