最高裁判所は1月31日、相続税対策で孫と結んだ養子縁組は有効かどうかが争われた訴訟で、「節税目的の養子縁組でも直ちに無効とはいえない」との初判断を示しました。
この判例を理解するには、①なぜ養子縁組が相続税対策になるのか②縁組の意思とは何か、を知る必要があります。
①なぜ養子縁組が相続税対策になるのか
相続税は、相続財産から基礎控除を引いた財産にかかります。基礎控除は現在、3000万円+600万円×相続人の数 です。例えば相続人が実子3名だと、3000万円+600万円×3=4800万円 となります。このケースで孫と養子縁組をしたとします。養子は実子と同じく相続人になりますので、基礎控除は3000万円+600万円×4=5400万円になります。このように相続人の数が増えれば基礎控除の額も増え、その結果として相続税が減るわけです。
②縁組の意思とは何か
民法は当事者間に縁組の意思がないときは縁組は無効とするとしています(第802条第1号)。本件ではこの縁組の意思が祖父にあったかどうかが争点になったわけです。
縁組の意思とは、社会通念上親子関係と認められる関係を成立させるという意思(実質的意思)と解されています。単に縁組届出をする意思(形式的意思)ではありません。そうすると節税目的の養子縁組は実子と同じ親子関係(例えば同居するなど)を成立させる意思がない場合が多く、縁組の意思はないと考えるのが自然ではないでしょうか。しかし最高裁判所は、「節税の動機と縁組の意思は併存し得る」と指摘し、本件の祖父に「縁組の意思がないとはいえない」として孫との縁組は有効としました。
相続税対策として孫を養子にすることは昔から広く行われてきました。それを今になって節税目的があれば養子縁組は無効とするのはあまりにも影響が大きいと最高裁は考えたはずです。そこで「節税の動機と縁組の意思は併存し得る」とした上で縁組の意思を広く解したのではないでしょうか。
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