テーマ:相続・遺言
相続人の行方不明⑴では、一般に「相続人の行方不明」と言われているケースの中にはむしろ「連絡先不明」というべき場合が多いということを説明しました。しかしまれに本当の行方不明、すなわち戸籍上は生存しているにもかかわらず、住民票上の住所には居住していない場合があります。このような場合に対処するための制度が民法第25条以下に定められている①不在者の財産管理人と②失踪宣告です。今回はこれらの制度を説明したいと思います。
民法は、第25条で家庭裁判所は「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という)」のために財産管理人を選任できるとし、第30条第1項で「不在者の生死が7年間明らかでないときは」家庭裁判所は失踪宣告をすることができると定めています。前者が不在者の財産管理人の制度、後者が普通失踪宣告の制度です。つまり不在者の生死が7年間明らかでないときは失踪宣告、それ以外のときは不在者の財産管理人を選任するという制度分担になっています。ちなみに30条第2項は特別失踪宣告を定めていますが、この説明は省略します。
例えば相続人の一人が行方不明のため遺産分割協議ができない場合、行方不明になったのが3年前であれば失踪宣告は請求できないので、まず不在者の財産管理人を選任し、遺産分割協議をすることになります。ただし不在者の財産管理人は原則として保存行為と管理行為しかできないため、遺産分割協議という処分行為をするには家庭裁判所の許可が必要です。そして遺産分割協議について家庭裁判所の許可を得るには、原則として不在者の法定相続分を確保することが必要です。不在者の相続分を放棄するというような遺産分割協議は認められない可能性が高いです。
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