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不動産担保、住宅ローン

任意売却できなかった破産事案 2012年10月12日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 昨年、6月に破産申立をし、管財事件になっていた事案が今月、終了しました。今は管財事件といえども、申立から4ヶ月くらいで終了するケースも多いので、債権者への配当もないのに1年5ヶ月もかかるのは珍しいといえます。

 原因は破産者が所有していたマンションが任意売却できず、不動産競売で処理されたからです。もともとこのケースはマンションがオーバーローン基準を満たさず、同時廃止にならなかった事案です。もっともそういう場合でも最近は任意売却してから、破産申立をすることが多いのですが、事情により申立前の任意売却もできませんでした。ですので私としては破産管財人に任意売却をしてもらう予定で破産申立をしました。

 当初はもちろん破産管財人も任意売却する予定でした。ところが市役所の差押がネックになりました。このマンションは破産者が固定資産税を払っていなかったため、市役所が差押の登記をしていました。任意売却するには、この差押の登記を抹消してもらうように事前に市役所の同意を得ることが必要です。しかし市役所は近年、滞納税金を完済しなければ差押の抹消を認めないという姿勢に転換し、かつ破産者側も滞納税金の完済ができなかったため、結果としては差押の抹消の同意は得られませんでした。

 これにより任意売却は不可能となり、後は住宅ローン会社が競売をするのを待つだけになりました。そのためかなり時間がかかったわけです。以上のように任意売却というのは必ずできるというものではないのです。

住宅ローンが払えなくなった理由 2012年04月03日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 このブログで何回も住宅ローンが払えなくなったときの対処法について説明してきましたが、今回は私が接してきた住宅ローンを払えなくなった理由を紹介したいと思います。
 よくマスコミなどで取り上げられるのは、会社をリストラされたとか、給料が減ったという理由です。しかし私の感覚としては、意外に少ないような気がしています。

 一番、多いのはそもそも返済計画に無理があったケースです。中には、住宅ローンを組む前からすでに多重債務だったということもありました。自営業で、住宅ローンを組む前からうまくいっていなかったというのも同類です。

 離婚が原因という方も目立ちました。これはわかりやすい話で、当初は夫婦二人の収入を当てにしてローンを組んだのが、離婚して一人の収入では払えなくなったというものです。

 また最近は、病気で働けなくなったいう理由もよく聞きます。

住宅ローンの遅延損害金について 2012年03月12日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 先日、住宅ローンの遅延損害金について相談を受けました。たとえば住宅ローンの残高が1000万円、毎月の返済が10万円、損害金の利率が年14.5%とします。この場合、損害金の額は1000万円の14.5%なのか、10万円の14.5%なのかという問題です。

 これは期限の利益を喪失したかどうかで異なります。つまり今まで返済が遅れたことのない人がたまたま1ヶ月だけ遅れたとします。このときは10万円に対して年14.5%の遅延損害金がかかります。計算すると約1200円になります。なぜ10万円に対してかというと、この人は毎月10万円を分割して払えばよいからです。このように分割払いが認められていることを「期限の利益」といいます。
 しかし返済が何ヶ月も行われないと、契約により一括払いを求められることになります。これを「期限の利益の喪失」といいます。この時点で1000万円を一括して支払う義務が生じます。そのため遅延損害金は1000万円に対して年14.5%になります。月当たり約12万円です。

 このように遅延損害金は期限の利益が喪失したかどうかで、天と地との差が生じます。

不動産鑑定士を活用して、破産同時廃止(同廃) 2011年12月19日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 私は今までに一度だけ、不動産鑑定士に不動産鑑定評価書を依頼したことがあります。それは住宅を所有している方の破産申立に関してです。この方の住宅は名古屋市近郊の市街化調整区域内の一戸建てでした。なぜか固定資産税の評価額が高く、固定資産評価証明書による不動産の同時廃止基準(オーバーローン基準)を満たしませんでした。また市街化調整区域内の住宅は流通することを予定しないため、査定書を作成してくる不動産業者が見つかりませんでした。そこで最後の手段として不動産鑑定士に不動産鑑定評価書を作成してもらいました。これによりオーバーローン基準を満たすことができ、破産同時廃止(同廃)になりました。

 たしか費用は全部で15万円くらいだったと思います。それでも管財人選任事件になった場合に裁判所に納める予納金よりははるかに安くすみました。

オーバーローン基準の具体例 2011年12月12日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 不動産を所有している方の破産は、不動産の同時廃止基準(オーバーローン基準)を満たしている場合は破産管財人を選任しない破産(同時廃止事件)となり、そうでなければ破産管財人を選任する破産(管財人選任事件)になります。

 それではどういう場合にオーバーローン基準を満たすのでしょうか。名古屋地方裁判所では、①を提出させ、①が条件を満たさない場合には、②③④のいずれかの資料を提出させるという扱いです。

①固定資産評価証明書
 建物の担保する被担保債権額が固定資産税評価額の1.5倍以上である場合
 土地の担保する被担保債権額が固定資産税評価額の2倍以上である場合

②近隣の不動産業者2名の時価に関する査定書
 当該不動産が担保する債権額が不動産の時価(査定額の平均値)の1.5倍以上である場合

③不動産執行手続中の最低売却価格を証する書面
 当該不動産が担保する債権額が不動産の最低売却価格の2倍以上であるとき

④不動産鑑定士作成の鑑定評価書
 当該不動産が担保する債権額が不動産の時価の1.2倍以上であるとき

オーバーローン基準とは何か。 2011年12月08日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 オーバーローン基準とは、不動産の同時廃止基準のことです。不動産は本来、高価なものですから、不動産の所有者が破産をするときは、破産管財人が選任される破産(管財人選任事件)になりそうです。しかし不動産を担保にしている債権(被担保債権)の額が不動産の売買価格を上回っている場合(「オーバーローン」といいます。)は、売買代金のすべてが担保権者に支払われ、他の債権者には配当されないので、破産管財人の仕事がありません。そこで裁判所はオーバーローンであることが明確な場合をオーバーローン基準として定め、この基準を満たす場合は管財人を選任しない破産(同時廃止事件)としています。

 ここで注意しなければならないのは、オーバーローンであっても、オーバーローン基準を満たさない場合があるということです。つまりオーバーローンかどうかは最終的には不動産が売れてみて初めてわかることです。そのため裁判所はオーバーローンであることが「明確」な場合を客観的にオーバーローン基準として定めているわけです。オーバーローン基準の具体例は次回に紹介したいと思います。

破産と任意売却はどちらが先か。 2011年12月05日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 当事務所では、①不動産を任意売却してから自己破産をするケースと②自己破産をした後で任意売却をするケースのどちらもあります。いずれにしても、担保付き債権(被担保債権)の額が不動産の売却価格を上回る場合(「オーバーローン」といいます)がほとんどですので、今回はオーバーローンの場合について説明します。

 まず、任意売却後に自己破産の依頼を受けた場合は当然、①です。

 逆に、不動産を所有する方から自己破産の依頼を受けた場合は、同時廃止基準(オーバーローン基準)を満たすなら、②が原則です。なぜなら任意売却が成立するまで長期にわたって他の債権者を放置するようなことは望ましくないし、また破産同時廃止になるのであれば、先に自己破産をしても特に不利益はないからです。これに対し、オーバーローンではあるが、オーバーローン基準を満たさない場合は、管財人選任事件になるのを避けるため、①が原則になるでしょう。

競売、任意売却の残債務 2011年11月30日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

競売や任意売却が行われても、売却価格を上回る住宅ローンは消滅せず、債務が残ることになります。この残債務はどうしたらよいのでしょうか。

①分割で払う。
ただ完済が不可能なほど多額な場合が通常です。

②消滅時効
住宅ローンの相手が銀行なら競売、任意売却から5年、住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)や信用金庫なら10年で時効になります。ただしその前に訴訟などが提起されれば、時効は中断します。

③自己破産
もっともすっきりするのはこの方法です。特に住宅ローン以外の債務もある方には自己破産を勧めています。

ちなみに債権回収会社(サービサー)と格安で和解できた、という記事を読んだことがありますが、これはまったく法的根拠のない話です。真に受けない方がいいと思います。

競売不動産にいつまで住めるのか。 2011年10月28日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 競売で不動産が落札され、新しい所有者が決定するまでといえます。では、それはどのくらいの期間でしょう。もちろんそれは住宅ローン会社によってまちまちですので、ここではもっとも一般的な例をあげたいと思います。

 まず住宅ローンの返済がストップしてから6ヶ月が経過すると、銀行などの住宅ローン会社は処理を債権回収会社(サービサー)に委任します。そしてサービサーからの連絡に応答しなければ3ヶ月くらいで競売申立がされます。競売申立から落札までは最近はかなり短くなっており、5ヶ月くらいでしょうか。

 以上から、返済をストップしてから新しい所有者が決定するまで1年以上はかかることがおわかりだと思います。

競売と任意売却 2011年10月27日

テーマ:不動産担保、住宅ローン

 住宅ローンの返済ができなくなった場合、住宅を売却して住宅ローンを完済できれば、それで問題は終わりです。しかし多くの場合は住宅を売却しても、住宅ローンが残ります。このような場合をオーバーローンといいます。

 オーバーローンで住宅ローンが返済できないのであれば、いずれ競売になるか任意売却をするかのどちらかになります。競売とは、住宅ローン会社が裁判所に申請して不動産を売却してもらうことです。任意売却とは、不動産の所有者が自分から売却することで、競売が強制であることの対比から「任意」売却と呼ばれています。競売と任意売却はそれぞれ長所、短所があります。決して任意売却の方が常に競売よりすぐれているわけではありません。

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