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相続・遺言

遺産承継業務 2014年02月04日

テーマ:相続・遺言

 現在、何件かの遺産承継業務にたずさわっています。遺産承継業務とは、(厳密な定義があるわけではなく、あくまで私の理解では)司法書士が相続人全員から委任を受け、相続人間の意見を調整して、被相続人の遺産全部を相続人に承継させる業務とでもいいましょうか。

 司法書士は従来から相続登記を通じて相続に関わってきました。しかしそれは不動産のみのことです。また相続登記の場合は、だれが相続するかは相続人間であらかじめ決まっているのが通常です。これに対し、遺産承継業務の遺産は不動産以外に預金、株式、生命保険などあらゆるものを含みます。また相続登記と最も異なるのは、司法書士が相続人の間に入って遺産分割協議をまとめ上げることが期待されていることです。かつてはこのような遺産承継業務が司法書士の業務であるかどうかが不明確でしたが、平成14年の司法書士法改正で財産管理業務が司法書士の付随的業務と認められ、遺産承継業務も財産管理業務として法的根拠を持つようになりました。

 今までは相続人同志のつながりが強いのが普通であったため、相続人は自分たちで利害の調整を行ってきました。しかし今後は相続人どうしが疎遠なケースが増えてくるのは間違いなく、相続人間の利害調整のニーズはますます高まってくると考えています。

相続財産管理人 2013年12月21日

テーマ:相続・遺言

 先日、名古屋家庭裁判所から相続財産管理人に選任されました。ある人が亡くなった場合、その財産は相続人に帰属します。しかし世の中には相続人のいない人もいます。例えば、本人も兄弟もともに子どもがおらず、兄弟が先に亡くなった場合です。その場合、相続財産はどうなるのか。民法は「国庫に帰属する」としています。ただその前に、本人の債権者(「相続債権者」といいます)に相続財産から弁済したり、特別縁故者と呼ばれる者に相続財産を分与しなければなりません。その手続を主導するのが相続財産管理人です。民法は、相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人などの請求によって、相続財産管理人を選任しなければならないと規定しています。今回は本人の財産を管理していた人から私が相続財産管理人になるように依頼され、家庭裁判所がその請求に基づき選任したということです。

 詳しいことは知りませんが、この相続財産管理人の選任が年々、増加しているそうです。要するに亡くなった方に家族や親戚がいないケースが増えているということです。NHKが「無縁社会」と言い、朝日新聞が「孤族の国」と呼んだ状況が相続財産管理人の選任数の増加からも裏付けられています。

法定相続分とは何か。 2013年09月11日

テーマ:相続・遺言

 司法書士会から、「民法900条第4号ただし書の規定のうち嫡出でない子の相続分に関する部分に係る最高裁判所の決定がされたことに伴う不動産登記等の事務処理に関する当面の取扱いについて」という長いタイトルの連絡がありました。要するに、今回の最高裁判所大法廷決定(平成25年9月4日)により、平成13年7月1日以降に発生した相続では、婚外子の法定相続分が他の相続人である子の相続分と同率として取り扱われることになることの確認です。

 今回の違憲決定は、法律婚の保護よりも子の差別の禁止を重視したものとして当然、支持できるものです。しかし決定の報道や論評はそこで終わっているものが多く、日頃、不動産の相続登記を行っている司法書士としてはやや不満の残るものでした。その原因は、法定相続分とは何で、実務上はどのように取り扱われているかという「そもそも論」が欠けているからです。

 法定相続分とは、法律(民法)が定めた相続人の持分です。例えば相続人が配偶者と子が2名であれば配偶者が2分の1、子が4分の1とされています。重要なのは、法定相続分は相続人の話し合い(「遺産分割協議」といいます。)で自由に変更できるということです。先の例では、配偶者がすべてを相続することも、子の一人がすべて相続することも自由です。現実には法定相続分どおりに相続する例は少ないと思います。子の間でも父母と同居してきた者と別居している者では、同居してきた子の方が多く相続するのが通常です。ですので私はいつも、「相続分は話し合いで自由に決めて下さい。法定相続分は建前です」と説明しています。
 
 仮に遺産分割協議が成立せず、家庭裁判所が遺産分割審判をするときは法定相続分が基準になります。今回の最高裁の決定は遺産分割審判に対する東京高等裁判所の決定を破棄したものです。

何十人の相続人 2013年05月25日

テーマ:相続・遺言

 現在、相続人が何十人にもなる相続登記で手間取っています。何で相続人が何十人にもなるかというと、相続される人(「被相続人」といいます)が亡くなったのが50年以上も前だからです。その時点では相続人はもちろん数人でしたが、50年もの間に10倍以上になってしまいました。つまり相続人である子が死亡すれば孫が相続人になり、孫が亡くなればひ孫が相続人になりますから、相続人は時の経過とともに倍々ゲームで増えていきます。

 たしかに相続登記はいつまでにしなければならないという期限はありません。そのため相続登記をしていない不動産はいっぱいありますし、「知り合いに聞いたら、『ほっておけばいい』と言われた」という話もよく聞きます。でも司法書士の立場から言うと、やっぱり相続登記はある程度の期間内にしておいた方がいいと思います。

相続人が海外に居住している場合 2013年01月08日

テーマ:相続・遺言

 不動産や預金の相続が生じた場合、遺言がなければ原則として相続人全員が関係書類に実印を押印し、印鑑証明書を提出することが必要です。しかし印鑑証明書というのは日本固有の制度なので、海外に居住し、日本で住民登録をしていない相続人は印鑑証明書を取得することができません。そこで実務上は以下のように扱われます。

 海外に居住している相続人が日本国籍を有していれば、その国の日本大使館または領事館(大使館の支所)にサイン証明書を発行してもらって、印鑑証明書の代わりにすることができます。具体的には、遺産分割協議書に大使館でサインをし、サインをしたのが本人であることは間違いないと記載してある用紙を遺産分割協議書にホチキスで綴じ、割印をしてもらうことになります。たまにホチキスで綴じてない「証明書」を渡されることがありますが、これは大使館の職員が無知なため起こるミスです。ホチキスで綴じてないと使い物になりません。

 以上に対し、海外に居住している相続人がその国に帰化し、日本国籍がない場合は次のようになります。私が経験したのは相続人がアメリカに帰化したケースですので、以下、アメリカについて説明します。この場合はもう日本人ではないので、日本大使館がサイン証明書を発行することはありません。そこで日本の公証人に当たるノータリー・パブリック(Notary Public)の面前で遺産分割協議書にサインをし、認証印を押してもらいます。ノータリー・パブリックは銀行に常駐しているようです。その上で、アメリカ移民局発行の帰化証明書のコピーにも認証印を押してもらいます。私はこの遺産分割協議書と帰化証明書のコピーで相続登記ができました。

2種類の相続放棄 2012年08月03日

テーマ:相続・遺言

 司法書士は、相続の放棄という用語をよく聞きます。「他の相続人は相続を放棄したので、私が相続します」といった具合です。しかしこの場合の相続放棄は、民法938条以下の相続放棄とは違います。つまり相続放棄と言う用語は2種類の意味で使われているということです。

 先の「他の相続人は相続を放棄したので」というのを正確に言うと、「他の相続人は相続しないという遺産分割協議をしたので」ということです。具体的には、そのような遺産分割協議書に実印を押して、印鑑証明書を提出することです。裁判所は関係ありませんし、期間の制限もありません。

 これに対し、法律(民法)で定められている相続放棄は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して行うものです。これは通常、プラスの相続財産がなく、あるのは借金だけという場合に、相続人がその借金を免れるために行われます。

 世間では一般に相続放棄とは前者の意味で使われます。しかし家庭裁判所に前者の相続放棄のことを聞きに行ったら、後者の相続放棄のことを教えられたという話もありますので、注意が必要です。

子が親がより先に死んだときは-代襲相続 2012年07月04日

テーマ:相続・遺言

 子は親の相続人です。では、子が親がより先に死亡したときはどうなるか。答えは子の子(孫)が相続人となる、です。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と言います。代襲相続は民法887条に定められています。

 間違えやすいのは、相続放棄は代襲相続の原因にはならないということです。つまり子が相続放棄をしても、孫が親を相続することにはなりません。この場合は子の次順位の者(第1が親の直系尊属、第2が親の兄弟姉妹)が親を相続します。

遺言があっても、もめるときはもめる。 2012年06月14日

テーマ:相続・遺言

 私は、「相続でもめないために、遺言を作りましょう」という言い方が好きではありません。遺言というものは、「作れば、もめない」ものではなく、「もめそうだから、作る」ものだと思うからです。

 遺言の存在意義は、他の相続人の実印が不要になるということです。遺言のない相続では、何をやるにも相続人全員の実印の押印と印鑑証明書の提出が必要です。逆に言えば、相続人全員の意見が一致しなければ何もできません。不動産の名義変更はもちろん、銀行預金の引き出しもできません。これに対し、遺言があれば、他の相続人の印鑑はいらず、財産を相続した相続人のみで手続を進めることができます。つまり相続人間でもめても、手続をすすめることができるのです。このように考えると、「相続でもめないために、遺言を作る」というのはちょっと違うとしか思えません。「相続をスムーズに進めるために、遺言を作る」というなら、まだわかりますが。

 昨日の日本経済新聞の記事に、遺言の内容が原因で相続争いになったケースが紹介されていました。そのようにならないために記事では、「遺言で遺留分を侵害しない」ことを挙げていましたが、私は遺留分を侵害していないのに、相続人間で紛争になったケースを知っています。遺言があっても、もめるときはもめるのです。

エンディングノートと遺言 2012年06月12日

テーマ:相続・遺言

 先週、「エンディングノート」という映画を見ました。この映画の影響もあって、現在、エンディングノートがちょっとしたブームのようです。

 従来、亡くなる人が書き残すものとしては、遺言が挙げられました。しかし実は遺言で法的効力が認められる事項は相続分の指定や遺贈など、かなり限られているのです。財産の分け方がほとんどを占めます。それ以外のこと、例えば葬儀の進め方などは遺言に記載することはできますが、法的効力がありません。そのため法律家は(私も含め)遺言に書くことを勧めてきませんでした。

 エンディングノートがブームとなったのも、遺言では自分の思いを十分、表現できないということが知られてきたからではないでしょうか。エンディングノートには、葬儀の進め方はもちろん、残された家族へのメッセージ、自分の人生の振り返りなども書くことができます。要するに自分の書き残したいことが自由に書けるのです。

 ただし、エンディングノートには法的効力はありません。ですから法的効力が必要なら遺言、不要ならエンディングノートという使い分けをするのがいいと思います。

死因贈与の欠点 2012年04月09日

テーマ:相続・遺言

 死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与です。例えば、父が長男に対し、自分が死んだら自宅を贈与すると約束することです。
 死因贈与は遺言のように公正証書にする費用や手間がいらず、また税法上、相続として扱われるため贈与税がかからないという長所があります。そのため一見、遺言や生前贈与より利用しやすいようにも思えます。
 
 しかし死因贈与には重大な欠点があり、私はお勧めできません。例えば上記のような死因贈与がなされ、その後、父が死亡したとします。そこで長男が家の名義を自分に変更しようとすると、他の相続人(例えば母や次男)の協力が必要になります。これは贈与者の地位を母や次男も相続するからです。そのため他の相続人が死因贈与に反対すれば、名義の変更はできません。これではなんのために死因贈与をしたのかわからなくなってしまいます。

 やはり生前に死後の財産の処分を決めておきたいのなら、遺言をするべきでしょう。遺言であれば、名義変更に他の相続人の協力は必要ありません。

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