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社会福祉

重度訪問介護 2012年11月20日

テーマ:社会福祉

 今日の朝日新聞に、重度訪問介護の記事が載っています。重度訪問介護とは、障害者自立支援法の制度で、同法によれば、「重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき、居宅における入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与すること」です。これだけではわかりにくいですが、要するにヘルパーが障害者の居宅で介護したり、外出に同行する制度です。重度の障害者は絶え間なく介護が必要なので、重度訪問介護が最大で1日24時間1年365日、提供されることになります。

 私はこの重度訪問介護が障害者福祉を特徴づけている制度だと思っています。現在、高齢者も障害者も、施設から在宅へ移行することが望まれていますが、介護保険には重度訪問介護のような制度はありません。そのため要介護度が高い高齢者が在宅で生活しようとすれば、結局は家族が介護しなければならなくなります。これに対し、障害者福祉には重度訪問介護があるので、重度の障害者が在宅で一人暮らしをすることが可能になります。

生活保護の自立支援プログラム 2012年09月13日

テーマ:社会福祉

 地元の中日新聞で、知り合いの記者さんが生活保護の連載をしています。表面的な記事の多い他紙と比べ、掘り下げた記事が多く、非常に勉強になります。

 今日の記事では、自立支援プログラムを取り上げていました。自立支援プログラムとは、平成17年から実施されている制度で、現に生活保護を利用している人の課題を類型化し、必要な支援をプログラムにして行っていくというものです。それまでどちらかといえば個々の福祉事務所や担当者まかせになっていた自立支援を組織化したものと言えるでしょう。

 私は生活保護に自立支援プログラムというものがあることは知っていましたが、具体的なことは知りませんでした。今日の記事で自立支援プログラムの「先進」である釧路市の例を知ることができてよかったです。

高齢者マンション 2012年07月10日

テーマ:社会福祉

 成年後見の仕事で、高齢者マンションに行くことが増えています。高齢者マンションとは知り合いのケアマネジャーから聞いたことばで、要するに、高齢者の便宜を図った賃貸住宅というくらいの意味です。昨年、高齢者住まい法が改正され、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録制度が始まりましたが、サ高住の登録をした高齢者マンションはまだ一部でしょう。

 現在、高齢者マンションがすごい勢いで増えているようです。たしかに自宅で生活するのがむずかしくなってきたが、特別養護老人ホームはいっぱいだし、かといって有料老人ホームに入るお金もないという高齢者に対応する住居は今までほとんどありませんでした。しかしこのような人はいっぱいいるわけですから、高齢者マンションが増えるのはもっともだと思います。高齢者マンションの中には、介護事業所が同居し、食堂や集会所を備えているところもあり、そうなると有料老人ホームのメリットはなんなのかと思わざるをえません。

障害者総合支援法は法的責任追及の対象になる。 2012年06月21日

テーマ:社会福祉

 昨日、参議院本会議で障害者総合支援法が可決され、成立しました。この法律は障害者自立支援法の一部改正であり、同法の廃止と新法制定を約束した基本合意に明らかに違反しています。基本合意というのは、平成22年1月、障害者自立支援法違憲訴訟団と政府が裁判上の和解として締結した合意文書のことです。違憲訴訟団は、総合支援法の成立に対して抗議声明を発表しています。http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-2464.htm

 訴訟団はこの抗議声明の中で、法的責任を追及することを明言しています。これは当然でしょう。裁判上の和解は確定判決と同一の効力があるのであり、今回の事態は国会と内閣が堂々とそれに違反したのですから。「障害者自立支援法を廃止します」という国の言葉を信じて和解に応じた原告の方の気持ちを思うと、怒りに耐えません。

生活保護法第4条の問題なんです。 2012年05月28日

テーマ:社会福祉

 高額所得者であるお笑い芸人の母が生活保護を受給していたことが大きく報道されました。しかし不思議なことに、生活保護法の条文を引用した解説はほとんどありません。

 問題の核心は、生活保護法第4条に違反していたかどうかです。

(保護の補足性)
第4条  保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2  民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3  前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

 生活保護は、補足性が要件になっています。すなわち生活保護は第1項にあるように、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用しても最低限度の生活の維持ができないときに認められます。そして第2項で、扶養義務者の扶養は生活保護に優先するとしています。ちなみに、ここで言う「民法」とは、第877条のことで、その第1項では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。そうであれば、子に別居する母親を扶養できるほどの高額の収入があり、援助が可能であれば、子の扶養義務が優先し、生活保護は認められないと言わざるを得ません。法律の解釈としては、こうなるはずです。

 ただしそのようなケースは例外中の例外でしょう。子が親に月10万円以上を送金できる家庭は普通、ありませんので、通常の生活保護受給者には何の関係もない話です。

福祉の現物給付と現金給付 2012年05月24日

テーマ:社会福祉

 現在、国会に提出されている「子ども・子育て新システム」法案の解説で、児童福祉法第24条がよく取り上げられています。同条は、「市町村は…児童を保育所において保育しなければならない」と規定していることから、市町村の保育実施義務を定めたものと言えます。別の言い方をすれば、市町村はお金を出せばいいのではなく、保育という現物を給付しなければならないということで、これを福祉の現物給付方式と言います。介護保険は違います。例えば、介護保険法第41条は「市町村は…要介護被保険者に対し…居宅介護サービス費を支給する」としています。これによれば、市町村は介護という現物を給付するのではなく、サービス費というお金を出すことになっています。これを福祉の現金給付方式と言います。

 かつて医療、福祉の多くは現物給付でした。それが介護保険法で高齢者福祉が現金給付に転換し、それをモデルに障害者自立支援法で障害者福祉も現金給付になりました。そして今、児童福祉の分野に現金給付を導入しようとするのが、「子ども・子育て新システム」です。現物給付は福祉を行政の責任で行う方式であり、現金給付は行政が福祉に責任を負わない方式とも言えます。そのため「子ども・子育て新システム」は「公的保育を解体する」「保育を保護者の自己責任とする」と批判されています。

発達障害は精神障害に含まれる。 2012年05月09日

テーマ:社会福祉

 「大阪維新の会」の大阪市議団は、5月市議会に提出予定だった家庭教育支援条例案を白紙撤回しました。発達障害は親の愛情不足が原因などというとんでもない内容でしたから、批判が続出したのも当然です。

 発達障害の法律上の定義は、発達障害者支援法第2条にあります。そこには「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」とあります。発達障害は、身体障害、知的障害、精神障害の3障害に比べ、認識が遅れており、発達障害者支援法が施行されたのも2005(平成17)年でした。それでもそれ以降は、発達障害は法律上も「脳機能の障害」であることが明示されました。そして同法を受けて、障害者基本法は障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者」と変更しました。つまり3障害との関係では、発達障害は精神障害に含まれることになりました。

 このように考えると、発達障害を脳機能の障害(精神障害)ととらえていない家庭教育支援条例案は、発達障害者支援法や障害者基本法にも反するものと言えます。

 

社会福祉の介護保険化 2012年05月01日

テーマ:社会福祉

 私が「社会福祉の介護保険化」ということばを知ったのは、鹿児島大学法科大学院の伊藤周平教授の一連の著作からです。それはこのような内容です。

 従来の社会福祉は、①施設補助(現物給付)方式、②市町村を通した入所・利用、③応能負担という特徴があったが、2000(平成12)年から施行された介護保険法により、高齢者福祉は①利用者補助(現金給付)方式、②直接契約による入所・利用、③応益負担に転換した。
 この介護保険法をモデルにして、障害者福祉の分野で2006(平成18)年から障害者自立支援法が施行された。
 そして児童福祉を介護保険や障害者自立支援法と同じ仕組みに転換しようとするのが、現在、国会に提出されている「子ども・子育て新システム」法案である。

 このような高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉に共通する「社会福祉の介護保険化」という説明はとても新鮮でした。このように考えると、政府がいったんは障害者自立支援法の廃止を約束しながら、それを反故にしようとした理由もよくわかります。障害者自立支援法の廃止と「子ども・子育て新システム」の制定は、理念として矛盾するからです。

国会と内閣が、裁判所を否定した障害者自立支援法問題。 2012年04月21日

テーマ:社会福祉

 今週、衆議院の厚生労働委員会で、障害者自立支援法の改正案として、障害者総合支援法案が可決されました。もともと政府は、障害者自立支援法違憲訴訟の「基本合意」で、障害者自立支援法を廃止し、新しい法律を制定すると約束しました。今回の事態は、形式的に障害者自立支援法の改正としていることのみならず、実質的にも同法の重要部分を引き継いでいることからも、完全に基本合意に違反しています。基本合意は裁判上の和解であり、裁判上の和解は確定判決と同一の効力を有します。これを指摘している記事 <a href=”http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-2417.html

 私に言わせれば、国会と内閣が、裁判所を否定したということです。政府は「法律を廃止すると現場が混乱する」などという言い訳をしています。しかしこれはまったく理由になりません。現場が混乱しないような法律を作ればいいだけのことです。マスコミはこのような政府の言い分にだまされず、もっとこの問題を取り上げるべきです。

「介護保険制度の改正について」勉強会 2012年04月16日

テーマ:社会福祉

 先週の土曜日は「介護保険制度の改正について」というテーマの高齢者問題・専門職ネットワーク勉強会に参加しました。登記や債務整理は介護保険のことを知らなくてもできますが、成年後見をやるのであれば介護保険の知識は必須だと思います。

 勉強会では、今回の改正の目玉である24時間対応の定期巡回・随時対応サービスについて、市町村のモデル事業に取り組んでいる方から発言がありました。それを聞く限りでは、このサービスを利用する要介護者はかなり限定されるという印象を持ちました。このサービスは在宅で介護をしている家族を援助するという域を出ておらず、一人暮らしの要介護者がこのサービスを利用して在宅で過ごすことを目指していないので、要介護者にはあまり望まれないようです

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