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社会福祉

なぜ介護保険料はどんどん値上がるのか。 2012年03月30日

テーマ:社会福祉

 介護保険の保険料は3年ごとに改定されますが、改定ごとにどんどん値上がっています。2000年の制度開始時は65歳以上の保険料は月平均3000円以下でしたが、今年の4月からは5000円程度になりそうです。なぜこんなに値上がるのかと言えば、介護保険法がそういう仕組みを組みこんでいるからです。

 介護保険法では、1割の利用者負担を除いた費用は、50%を公費(税金)、残りの50%を保険料で賄うことが決められています(第121条以下)。そのため介護給付費が増大すれば、それに比例して保険料も上がることになっています。これは介護保険で導入された制度で、医療保険はこのようになっていません。医療費も年々、増加しているにもかかわらず、健康保険料や国民保険料が介護保険料のように値上がっていかないのはこのためです。

 このような仕組みになった理由は言うまでもなく、介護給付費を抑制するためです。「保険料の値上げがいやなら、介護保険を利用することを控えなさい」というわけです。私はこのような介護給付費と介護保険料を連動させる制度は問題だと思います。介護給付費が増加すれば介護保険料が値上がるのは、必然ではありません。問題は介護保険の財政構造そのものにあります。

NHK「都会の孤立死 SOSが届かない」に納得できない。 2012年03月26日

テーマ:社会福祉

 3月20日放送のNHK「追跡!真相ファイル 『都会の孤立死 SOSが届かない』」を見て、釈然としない思いが残りました。この番組は今年の1月下旬、札幌市のマンションで、40代の姉と知的障害のある妹が死亡しているのが見つかった事件を取り上げたものです。家賃を滞納しガスも止められた部屋の中で、姉は病死、妹は凍死したという痛ましい事件です。

 私はまず、「SOSが届かない」というタイトルに抵抗があります。この姉は区役所に3回も生活保護の相談に行っていました。SOSは区役所に届いていたのです。区役所は「本人が保護申請の意思を示さなかった」と言っているようですが、姉は区役所から「懸命なる就職活動」が保護の要件と説明されたため、申請をあきらめただけです。区役所が姉の相談に応えて申請を促していれば、この姉妹は生活保護が認められ、死なずにすんだとしか思えません。また「個人情報の保護が救済の妨げとなった」という意見を肯定的に取り上げたのも納得できません。NHKにはもっと問題の本質に迫った論評を望みます。

 

『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』 を読んで。 2012年03月16日

テーマ:社会福祉

 矢部武『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』(新潮文庫、2012年)を読みました。タイトルに惹かれて読むことにしましたが、たいへんおもしろかったです。 

 著者は日米の両国を長年、取材しているジャーナリストです。近年、マスコミで孤独死がよく取り上げられます。しかし著者は「一人で亡くなることが問題なのではない」と主張し、アメリカを例に出します。著者によれば、アメリカは一人で生きることを前提とした社会であり、それゆえ政府やNPO、企業などが連携し社会全体で独居者の孤立や孤独死を防ぐ支援活動に取り組んでいるとのことです。そしてたとえ一人で亡くなったとしても、社会的なつながりがあれば、孤独死ではなく「自立死」だと言います。

 私がたいへん興味を持ったのは、アメリカでは低所得層に対する国の援助が日本よりもずっと充実していることです。アメリカでは政府支援を受けた独居者専用住宅もあれば、食料品を買うためのフードスタンプ(食料クーポン)の支給もあります。また生活保護制度はむしろ日本より受給しやすいとのことです。やはり公的援助もなしに、家族や地域の絆だけを強調しても問題は解決できないのです。

応益負担は社会福祉にはなじまない。 2012年03月14日

テーマ:社会福祉

 社会福祉の世界では、応益負担と応能負担という用語がよく使われます。応益負担とは、福祉制度を利用した時間(利益)に応じて費用を負担することです。これに対し、応能負担とは、利用者の能力(要するに所得)に応じて費用を負担することです。

 従来の社会福祉は応能負担でした。それが平成12年(2000年)の介護保険の導入で応益負担に方向転換しました。介護保険は利用者が利用料の1割を負担するという応益負担の制度です。その後、平成18年(2006年)から施行された障害者自立支援法で障害者福祉の分野にも応益負担が導入されました。しかし障害者はその障害ゆえに福祉制度の援助がなければ日常生活を営むことができません。それを「利益」というのはそもそもおかしなことです。私は社会福祉は応能負担であるべきであって、応益負担はなじまないと思っています。

 障害者自立支援法は障害者から大きな批判を浴び、全国で違憲訴訟が提起されました。また民主党も障害者自立支援法の廃止を選挙公約にしました。その結果、平成22年(2010年)に国と違憲訴訟原告団・弁護団との間で基本合意が成立しました。この基本合意文書には次のような記述があります。

  「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間しての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる。」

 ところが政府は現在、この基本合意を反故(ほご)にしようとしています。障害者自立支援法の名称だけを変えて、重要部分を温存しようとしています。これは絶対に許されないことです。

在宅介護はいいけれど。 2012年02月15日

テーマ:社会福祉

 3年に一度の介護保険法の改正を控え、マスコミで介護保険の新制度がよく取り上げられています。今回の目玉は、24時間対応型訪問介護のようです。私も「施設介護から在宅介護へ」という流れ自体は賛成です。しかし現在の介護保険の水準では「施設の定員が減り、在宅の家族の負担が増える」ことになってしまわないかという不安があります。

 介護保険の訪問介護はスポット業務です。24時間対応型と言っても、それは1日24時間、ヘルパーを派遣してくれるのではなく、あくまで24時間「対応可能」にすぎません。ヘルパーのいない時間の介護は家族の負担です。それで「施設介護から在宅介護へ」と言われても、家族は救われないのではないでしょうか。

障害者自立支援法は廃止するんじゃなかったのか。 2012年02月11日

テーマ:社会福祉

 障害者自立支援法は、それまで原則として無料だった障害者福祉に1割負担という応益負担を導入し、批判をあびた法律です。この法律に対しては、憲法14条、25条などに反することを理由とした違憲訴訟が提起されました。また民主党も障害者自立支援法の廃止を選挙公約にしました。その結果、平成22年1月に、違憲訴訟団と国とで、障害者自立支援法を廃止し、新法を制定する「基本合意」が結ばれ、和解が成立しました。

 しかし最近の報道によると、国は障害者自立支援法を廃止して、新法を制定するのではなく、同法の改正ですます方針とのことです。それも新法制定か改正かという手続の問題だけではなく、障害程度区分などの重要な内容も引き継ぐようです。私は、国が自ら作成した基本合意を反故(ほご)にするとは信じられない思いです。これだけはあってはなりません。

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