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自営業者、会社

自己破産とリース物件 2012年06月07日

テーマ:自営業者、会社

 先回の町工場の破産の続きです。

 自営業者の破産特有の問題として、リース物件の返還があります。自営業者は事業に必要な機械や什器をリースしていることが多いです。破産するのであればもちろんリース料の支払いを停止しますので、リース会社に債権届出書を提出してもらうとともに、リース物件の返還の打ち合わせをします。普通はリース会社の取引業者に物件を回収しに来てもらいます。そして返還後、リース会社から受領書をもらい、裁判所に提出します。ただ物件の価値が低く、リース会社が回収するとむしろコスト倒れになるような場合は、リース会社がリース物件の所有権を放棄することもあります。この場合は物件を返還する必要がありません。

 以上が通常の場合ですが、今回のように事業を第三者が継続するような場合は、その第三者がリース物件を買い取って、そのまま使用することも可能です。その場合は買取価格の打診をすることになります。

自己破産と事業承継 2012年05月30日

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 町工場を経営している個人事業主が自己破産し、工場は知人が引き継ぐという案件を依頼されました。

 まず考えなければならないのは、工場内の機械、器具などをいくらで引き継ぐかです。これは機械の販売業者に査定書(見積書)を依頼し、その価格を参考に売買価格を決定しました。相場とかけ離れた価格は裁判所が認めませんから、査定書(見積書)は必要不可欠です。ちなみに破産費用はこの売買代金の一部を充てる予定です。
 またこの工場は貸し工場(賃借物件)ですが、保証金を差し入れており、解約すれば、保証金が返還される契約になっています。そうすると賃貸借契約は解約するしかありません。そこで5月いっぱいで解約し、6月からは工場を引き継ぐ知人が新たに賃貸借契約を結ぶことになりました。

 個人事業者が廃業して、破産する場合は、現在でも破産同時廃止(同廃)事件の可能性がありますが、今回のように工場を第三者が引き継ぐような場合は、管財人選任(管財)事件になるはずです。特に今回の方は保証金の返還によりそれなりの額の預金があるので、自由財産の拡張をするためにあえて管財事件として申し立てる予定です。

飲食店と債務整理 2012年03月28日

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 当事務所は昔から自営業者の債務整理を多く扱ってきました。いろいろな業種がありましたが、もっとも多いのは飲食店だと思います。例えば居酒屋、喫茶店、レストラン、焼肉店、ラーメン店などです。これらの業者が多重債務になった原因は、売上不足です。私の実感としては、従来、個人事業が中心だった飲食店業界がいくつかの理由から売上を減らし、営業がむずかしくなっています。

 私は相談を受けると、まず月商を尋ねます。そして月商が100万円以下であれば、事業の継続は困難であると推定します。私の経験から言うと、飲食店が月商100万円以下では家族の生活費が出ません。家族の生活費が出ないということは、仮に借金がゼロになったとしても生活できないということです。非常におおざっぱな基準ですが、私は飲食店が営業を継続できるかどうかについて、月商100万円を一つの目安にしています。

また自営業者の破産同時廃止が厳しくなった。 2012年02月28日

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 名古屋地方裁判所民事第2部破産係より、本年3月1日付をもって「同時廃止基準」を改訂したと愛知県司法書士会に連絡があったので、さっそく新しい基準を見てみました。そうしたら債務者が個人事業者の場合は、「原則として、事業廃止前2年分の税務申告がなされており、その申告書及び会計帳簿が保存されていること」という条件が新しく加わっていました。
 
 これからは自営業者の方から自己破産の相談を受けた場合、その場で2年分の確定申告書と帳簿が保存されているかを確認しなければなりません。そうしないと破産同時廃止で処理できるか=破産費用がいくらかかるかが判断できませんから。

会社を放置して、代表取締役だけが破産できるか。 2012年02月13日

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 会社を放置して、代表取締役だけが破産できるのかというご質問を受けました。会社が借入をする場合、代表取締役が連帯保証人になるのが通常です。この会社が債務を返済できず、事実上倒産した場合に、会社は破産などの措置をとらず、代表取締役だけが破産して、免責を受けることができるかという問題です。

1 このような場合は、会社と代表取締役の両者が破産申立をするのが原則であることは確かです。そうすると通常、会社は管財人選任事件(管財事件)、代表取締役は個人的な資産がなければ同時廃止事件(同廃事件)になります。

2 しかし会社と代表取締役はもちろん別人格ですから、代表取締役のみの破産申立が認められないというわけではありません。特に会社の倒産から何年も経っているような場合は、破産費用との関係から代表取締役のみの破産を望む気持ちは理解できます。

3 ただしその場合は、代表取締役に資産がなくても管財事件になります。破産申立は代表取締役のみであっても、代表取締役の破産を認めるためには、破産管財人による会社自体の調査が必要という理由からです 。

個人事業の赤字は、会社の赤字とは違う。 2012年02月06日

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 個人事業主から事業を継続するか、廃業するかの相談を受けた場合、まず損益計算書の「差引金額」を見ます。これがマイナス(赤字)であれば、事業の継続はむずかしいと判断します(もちろん決算書が実態を表していることが前提ですが)。差引金額がマイナスと言うことは、売上より経費が多い、つまり事業主の生活費がゼロということです。
 会社は違います。会社の経費には役員の報酬が含まれているので、多少、差引金額がマイナスでも役員の生活費はゼロではありません。
 以上は基本中の基本ですが、実際には、売上より経費が多い個人事業主はたくさんいます。これは生活費を借入や他の収入(年金や家族の給料)でまかなっているということですので、継続はお勧めしません。

実は業種によって違う、自営業者の自己破産 2012年01月30日

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 自営業者の自己破産の扱いは、業種によって異なることがあります。例えば、破産後も事業を継続することができる場合です。この場合、建設業の一人親方のように店舗や事務所を構えていない業種では、同時廃止事件になることも多いです。これに対し、飲食店のように店舗があり、外部から営業を継続しているかどうかがわかるような業種は、管財人選任事件になる確率が高まります。
 これは裁判所が、債権者から「あの店は破産したにもかかわらず、営業を続けている」というクレームがあったときに、「裁判所としては破産管財人を選任して、資産がないことを調査しました」と回答したいからです。このように裁判所の書記官から聞いたことがあります。

会社の民事再生 2012年01月16日

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 会社の民事再生について何度か質問を受けたことがあります。しかし「500万円以上の費用がかかります」と言うとみなさん驚かれて、話が終わってしまいます。たぶん質問された方は、個人の民事再生(個人再生)や会社の破産と同じように考えられているのだと思います。ちなみに個人再生は文字通り個人事業主は利用できますが、会社(法人)は利用できません。

 会社の民事再生は個人再生と同じ「民事再生法」という法律で定められているのですが、両者はかなり違います。費用で言えば、個人再生は50万円以下でできますが、民事再生は弁護士費用、裁判所に納める予納金などをあわせると500万円以上になります。そのため民事再生は負債総額が10億円以上あるような会社でないと、実際上、利用できないものとなっています。逆に言えば、負債総額が数千万円という規模の会社では現実には利用できない制度になっています。

事業者破産の論点 2012年01月10日

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 事業者が破産を検討する場合、以下のような点が問題となります。

1 事業を継続するか、廃業するか。
2 破産を選択するか、破産以外の方法を選択するか。
3 破産を選択するとしたら、同時廃止事件か、管財人選任事件か。

 また事業者には個人事業主と会社の2つがあります。したがって個人事業主と会社についてそれぞれ上の3点を検討することになりますが、認められる組み合わせと認められない組み合わせがあるのがむずかしいところです。たとえば個人事業主の破産では同時廃止事件の場合と管財人選任事件の場合がありますが、会社の破産は管財人選任事件になります。

財産があれば、破産の結果、廃業せざるをえない。 2011年11月11日

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 店舗や工場を所有している個人事業者が破産すれば、その不動産は手放さざるをえません。また売却できるような機械や備品、在庫があればすべて処分することになります。そうなればその事業者は結果的に廃業せざるをえないでしょう。現行の破産法が想定しているのはこのような破産です。そのため破産は清算型の倒産と呼ばれるのです。

 しかし逆に言えば、処分できるような財産が何もなければ、破産をしても結果的に廃業しなくてすむことがあります。要するに廃業は破産の目的ではなく、結果なのです。破産の目的は免責を得ることであり、破産法が想定しているような破産をすれば結果的に廃業せざるをえないということなのです。そのため破産法も想定していないような事業者が破産しても廃業せずにすむことがあります。

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