テーマ:自営業者、会社
自営業者が破産すると事業は当然、廃業しなければならない、というのが法律界の常識のようです。この理由は、破産は清算型の倒産であるということです。つまり①倒産には大きく分けて再建型の倒産と清算型の倒産がある、②前者の代表が民事再生であり、後者の代表が破産である、③したがって事業を継続したければ破産ではなく、民事再生を選択すべきだ、という論法です。
もちろん、この論法自体は間違っていません。しかし他方、破産法には、どこにも「事業者が破産する場合は、事業を廃業しなければならない」とは書いてありません。そのため現実には破産しても事業を廃業しなくてもすむことがあるのです。この問題は債務整理の一番の応用問題ですので、これから何回かに分けて触れていきたいと思います。
テーマ:自営業者、会社
「避けた方がいいのか」と問われれば、「避けた方がいい」と答えます。自営業者(個人事業主)が借金を払いきれない場合、法律は「廃業するなら破産、営業を継続するなら個人再生」を想定しています。ですから裁判所も法律家もその方向で誘導することになるでしょう。
また自営業者(特に飲食店など、店舗のある自営業者)が破産して営業を継続しようとすれば、管財事件になり、破産費用がかさみます。
以上から、当事務所も営業を継続するならまず任意整理か個人再生を勧めると思います。しかし「不可能」というわけではないので、支払能力の点から破産しかないのであれば、破産の方向を検討します。
テーマ:自営業者、会社
会社名義で銀行などから借入ができなかったため、取締役個人がサラ金、カード会社からお金を借りて、会社の運転資金に充てたような場合です。
会社と取締役は別人格なので、もちろん取締役のみが破産できます。ただし破産者は取締役の資格を喪失するので、申立前に取締役を辞任することになります。
注意しなければならないのは、取締役が借入金を会社の運転資金に充てると、それは法律的には取締役の会社に対する貸付金になるということです。ですから取締役が破産するのであれば、会社から貸付金を回収できないかを裁判所がチェックします。会社が倒産しているならともかく、営業を継続しているのなら、「会社にもお金がない」の一言ではすまないでしょう。場合によると破産管財人選任事件になるかもしれません。このようなことを避けるためには、裁判所に提出する陳述書の書き方に工夫が必要です。
テーマ:自営業者、会社
先月、名古屋地方裁判所に申立をした元・自営業者の方の破産が同時廃止になりました。よかったです。
同庁の「新・同時廃止に関する運用基準」は、個人事業者につき「所有する事業用資産と生活用資産の処分価格の合計が40万円に満たない」場合には同時廃止処理できるとしています。今回の破産は明らかにこの基準を満たしているので、同時廃止が当然の事案でした。しかし一昨年くらいから、同時廃止と予想していた破産が管財事件になるケースが何度かあったので、少し心配していました。管財事件になれば、申立人に、裁判所に納付する予納金を用意していただかなければなりませんので。
でも今回の件で、基本的には「運用基準」どおり考えればいいのだと安心しました。
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同じ事業者といっても個人事業主と会社ではだいぶ違います。当事務所では以下のような事例の経験があります。
①現に営業している会社のみの破産
②現に営業している会社+連帯保証人になっている社長の破産
③現に営業している会社+連帯保証人になっている社長夫婦の破産
④数年前に事実上、倒産した会社の連帯保証人になっている社長のみの破産
⑤会社は営業を継続し、社長のみが破産
⑥会社は営業を継続し、社長以外の取締役のみが破産
この中で破産管財人が選任されない破産(破産同時廃止)の可能性があるのは、⑤⑥です。過去には④で破産同時廃止になった経験もありますが、現在ではほぼ破産管財人が選任されます。①②③では少なくとも会社の破産に管財人が選任されます。
テーマ:自営業者、会社
借金の返済に困った自営業者(個人事業主)が事業を継続できるかどうかのポイントは、その事業から自営業者とその家族の生活費が出るかです。すなわち事業の売上から経費を引いたものが利益(所得)ですが、その利益が自営業者とその家族の生活費を上回っているかどうかです。それがマイナスであれば仮に借金がなくても生活できないわけですから、事業の継続はむずかしいでしょう。その場合は借金の問題ではなく、事業自体の問題です。
借金の返済に追われていると、借金さえなくなれば事業を継続できると考えがちです。しかしその前に事業から生活費が出るかどうかが問題です。それがクリアして初めて、どうやって債務を減らすかという次の問題になります。
テーマ:自営業者、会社
自営業者の方が借金の返済に困って相談にみえたときは、私はまず、「事業を継続したいのですか、廃業するつもりですか」を尋ねます。これにより債務整理の方向性が大きく変わってくるからです。そして「事業を継続したい」ということであれば、受任して2ヶ月ほど様子を見ることが多いです。
なぜこのようなことをするかというと、それまで借入と返済に明け暮れていた自営業者は、自分の事業が事業として成り立っているのかを実感できないからです。司法書士が受任通知書を送付すれば、債権者からの取立が止まります。そこで借入と返済をストップして、事業に専念してもらうのです。もちろん売上や経費の記録や家計簿はきちんと付けてもらいます。その後、本人といっしょに事業を継続するかどうかを考えるのです。
中には返済をストップしても経費の支払ができないとか、生活費が出ないというケースもあります。この場合は事業として成り立っていないわけですから、廃業した方がよいでしょう。これに対し、生活費まで確保できるなら継続の可能性があります。
テーマ:自営業者、会社
当事務所は昔から自営業者(個人事業主)の債務整理が多いのですが、自営業者の債務整理は債務整理の中でも難易度が高く、いわば応用問題ともいえます。
サラリーマンなどと違うのはまず事業を継続するのか、廃業するのかが問題となるということです。債務整理といっても、事業を継続するのか、廃業するのかで方向性がまったく異なります。事業を廃業することを決めてから相談にみえる方もいれば、「できれば事業を続けたいが、だめならやめるしかない」という方もいます。後者であれば、受任後、2ヶ月ほど事業を継続してから結論を出す場合もあります。
事業を廃業するなら自己破産、継続するなら破産以外の方法(任意整理や個人再生)というのが基本となります。しかしそれだけで済まない場合もあり、それが私が応用問題と言うゆえんです。
テーマ:自営業者、会社
本日、自己破産の申立の打ち合わせを予定している方は、昨年の秋に小売業を廃業した元・自営業者です。当事務所は昔から自営業者(個人事業主)の債務整理が多いのですが、自営業者の自己破産はいつも気を使います。それはサラリーマンや無職の方より破産管財人が選任される破産(管財事件)になる可能性が高いからです。
破産法という法律は、裁判所が破産管財人を選んで、財産の調査、処分を行うという構造になっていて、申立人にめぼしい財産がないときは破産管財人を選ばないとしています。破産管財人が選任されない破産を同時廃止事件といいます。個人の自営業者といっても実際にはめぼしい財産がない場合が多いのですが、それでもサラーリマンよりも財産調査の必要性が大きいと裁判所は考えるわけです。
管財事件になると、破産管財人の報酬を申立人が裁判所に納めなければならず、その額は原則として40万円です。ですから私としてはできる限り同時廃止事件になるように努めなければなりません。
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