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自己破産

2度目の破産は? 2013年04月24日

テーマ:自己破産

 「以前、自己破産をしたことがあるのですが、もう一度、破産できますか」という相談を何度か受けたことがあります。この質問の答えは「できないわけではありません」ということです。破産法には免責不許可事由というものが定められており、そこには「免責許可の決定の確定の日」から「7年以内に免責許可の申立があったこと」とあります(第252条)。簡単に言えば、破産から7年以内なら破産は認められないが、7年を過ぎれば認められる可能性があるということです。

 ただし専門家に相談すると、できるだけ他の方法を勧められると思います。最近、私が扱った方は個人再生で十分、返済が可能なので、個人再生を申し立てました。もちろん破産以外の方法が考えられないのであれば、再度の破産もあり得るとは思います。ただ、その場合は破産管財人が選任される管財事件になりますので、ある程度の費用は必要です。

按分弁済による同時廃止処理が正式になくなった。 2013年02月26日

テーマ:自己破産

 毎年、この時期になると司法書士会を通じて、名古屋地方裁判所が同時廃止基準を改訂したとの連絡がありますが、今年もありました。今回の改訂では、按分弁済による同時廃止処理基準の記載の削除が行われました。これは次のような問題です。

 もともと破産には破産管財人を選任する破産(管財事件)と管財人を選任しない破産(同時廃止事件)があります。そして管財事件は同時廃止事件より費用も手間もかかることから、破産申立をするときは、まず同時廃止事件にならないかを考えます。同時廃止基準とは、どういうときなら同時廃止事件になるかを定めた基準のことです。

 同時廃止基準の冒頭に「総額40万円基準」が掲げられています。これは債務者の資産総額が40万円に達しない場合には同時廃止事件、40万円以上の場合は管財事件とするという基準です。例えば唯一の資産が生命保険の解約返戻金であるとすると、解約返戻金の額が20万円であれば同時廃止事件になります。では50万円であればどうでしょう。基準に即せば管財事件になります。しかしこの50万円を債権者に債権額に比例して弁済すれば資産はゼロになります。かつて裁判所は破産申立人に対し、このような按分弁済(あんぶんべんさい)を命じて、同時廃止事件にしていました。

 しかしこのような按分弁済による同時廃止処理は数年前から認められなくなりました。単純に資産の総額が40万円以上であれば管財事件になるようになりました。今年の同時廃止基準の改訂により按分弁済による同時廃止処理は正式になくなりました。

管財事件が増えました。 2012年09月06日

テーマ:自己破産

 このブログでは何度も破産手続には、破産管財人が選任されない同時廃止(同廃)事件と破産管財人が選任される管財人選任(管財)事件の2種類があることを述べてきました。従来は破産の約9割が同廃事件、残りの1割が管財事件と言われており、私の事務所でも圧倒的多数は同廃事件でした。

 しかし近年、管財事件の比率が高まっているようで、私の事務所でも最近は管財事件の方が多くなっています。原因としては第1に裁判所が従来よりも同廃事件を認めなくなったことがあげられます。例えば昔は会社の代表取締役が倒産した会社を放置し、自分個人の破産申立をした場合、会社の倒産が何年も前であれば同廃が認められていました。しかしこの数年はまず会社、個人両方の破産が求められ、それができなければ個人の破産は管財事件になります。
 第2に破産の数自体が大幅に減少する一方で、複雑な事情のあるケースの比率が増えたこともあげられます。そうするとどうしても同廃事件より管財事件の比率が高くなります。

 管財事件は同廃事件よりかなり費用がかさみます。なので私の事務所でも長期間、費用を積み立てももらうことが増えました。

生活保護受給者の自己破産は無料 2012年03月01日

テーマ:自己破産

 私はこれまで生活保護を受給している方の自己破産の申立を何度も行ってきました。その多くは法テラス(正式名称は「日本司法支援センター」)という国が設立した機関の法律扶助という制度を利用したものでした。これは自己破産の費用を法テラスが立て替えて弁護士や司法書士に支払い、その後、本人が法テラスに立替金を分割で返済していくという制度です。

 これが平成22年(2010年)から、生活保護の受給者は法テラスに対する返済義務が免除されるという扱いになりました。要するに生活保護受給者は要件を満たせば自己破産の費用を法テラスが負担する=無料で自己破産の申立ができるようになりました。生活保護の受給者の方から自己破産の相談を受けると、最初に聞かれるのはいつも「いくらかかるのか」でした。それが今では「法テラスを利用できれば無料です」と答えられるようになりました。

破産したのに免責されないことはどのくらいあるか。 2011年11月07日

テーマ:自己破産

   実は、ほとんどありません。
 破産法には、破産しても免責が認められない場合として免責不許可事由が定められています。その代表がギャンブルで借金を負ったような場合です。したがって例えば借金の原因がパチンコであれば、破産しても免責されないことになりそうです。

 しかし実際には裁判所が工夫をして免責が認められてきました。やはり裁判所も免責不許可は避けたいのです。以前は任意弁済を命じて、免責を認めていました。これは破産者に債務額の1割程度を積み立てさせて、債権者に対し、債権額に比例して弁済させることです。最近は任意弁済はあまり行われなくなって、代わりに破産管財人を選任するようになっています。そして管財人に破産者が反省していることを確認させて、免責を認めています。

 当事務所でもこれまで免責不許可事由のある破産申立をたくさん行ってきましたが、免責が認められなかったことは一度もありません。

破産と免責 2011年11月04日

テーマ:自己破産

 破産すると借金の返済を免除される、と言いますが、正確には破産して、免責が許可されれば、返済が免除されるということです。もう少し説明すると、破産とは財産をお金にかえて債権者に配当する手続であり、免責とはそれでも残った債務につき責任を免除する手続です。

 このように破産と免責は別個の手続なので、破産法には、破産しても免責が認められない場合が定められています。これを免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)と言います。その代表がパチンコなどのギャンブルで借金を負った場合です。

自己破産と退職金 2011年10月31日

テーマ:自己破産

 退職金は特殊な財産です。例えば、現在、退職すれば200万円の退職金が支給される人がいるとします。しかし退職しなければもちろん1円ももらえません。この方が自己破産をするとき、退職金はどのように扱われるのでしょうか。

 これについては裁判所が基準を定めています。名古屋地方裁判所では、退職金予定額は8分の1と評価し、その額が20万円以上の場合(退職金予定額が160万円以上の場合)には、その額を積み立てて、債権者に任意弁済することになっています。
 冒頭の例では、200万円の8分の1である25万円を用意し、債権者に任意弁済することになります。これに対して、退職金予定額が160万円未満であれば、任意弁済は指示されません。

自己破産と生命保険 2011年10月26日

テーマ:自己破産

 自己破産の申立をするとき、生命保険には気を使います。債務者に30万円以上の個別財産があれば原則として管財人選任事件となり、財産を処分しなければなりません(名古屋地方裁判所の例)。ただ、私の経験上、自己破産をしようとする人が30万円以上の預金があるのを知らなかったということはほとんどありません。

 しかし生命保険の解約返戻金が30万円以上あるのを知らなかったということはよくあるのです。解約返戻金(かいやくへんれいきん)とは、掛け捨てでない生命保険を解約したときに契約者に返還されるお金です。長年、保険に入っていると、解約返戻金が多額になることがあるのです。当事務所が扱った例でも、解約返戻金が100万円以上になっているのを本人が知らなかったことは何度もありました。

破産者であるのはわずかな期間です。 2011年10月18日

テーマ:自己破産

 裁判所が破産手続開始の決定をすると債務者は「破産者」という身分になります。そして免責決定が確定すると破産者ではなくなります。この期間は同時廃止事件であれば、2~3ヶ月です。そんなに短いのか、と思われる方も多いと思います。

 たしかに借金の返済をしなくなると信用情報機関(ブラックリスト)に5年ほど登録されます。しかしそれは破産の効果ではなく、返済を延滞した結果です。破産者であるのはあくまで数ヶ月です。破産者は会社の取締役になれないなどの資格制限がありますが、それはわずかな期間なのです。

破産同時廃止(同廃) 2011年10月17日

テーマ:自己破産

 破産法という法律では、「裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産管財人を選任しなければならない」としています。他方で、裁判所は、破産手続の費用が不足するときは、「破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」ともしています。

 要するに、破産手続では本来、破産管財人が選任されるが、費用が不足するときは破産管財人を選任せずに破産手続を終了(廃止)するということです。これを破産同時廃止(同廃)といいます。そして名古屋地方裁判所では、破産手続の費用を40万円としているので、債務者の資産総額が40万円に達しない場合に同時廃止としています。破産手続の費用をいくらとするかは裁判所によって異なるので、同時廃止の適用基準も全国一律ではありません。

 法律では破産管財人が選任される破産(管財事件)が原則のように読めますが、現実には同廃事件が破産の9割を占めると言われています。

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