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成年後見人はどんな場合に必要なのか。 2020年07月09日

テーマ:成年後見

成年後見制度がわかりにくいのは、法律の建前と現実にギャップがあるからです。

法律の建前は、認知症などで判断能力がなくなった方は、契約能力がないし、また家族に代理権が認められるわけではないので、なんらかの契約をするときは成年後見人を選任する必要があるということです。
しかし例えば介護の現場では、家族の代理が当然のように認められています。なので判断能力のない方が老人ホームに入居するときは家族が契約書に証明押印し、利用料は本人の銀行口座から引落で支払われるのが通常です。「家族がいても、成年後見人がいなければうちには入居できません」と主張する老人ホームはおそらくないでしょう。そのため老人ホームに入居するためだけに成年後見人を選ぶ必要は実際にはありません。

これに対し、判断能力がない方が自宅を売却する場合には成年後見人が必要な場合が多いです。なぜなら不動産取引では、本人が契約内容を全く理解できないようなときは、さすがに売却を認めていないからです。

結局、成年後見人が必要かどうかは、何をしたいかで変わってくるのです。銀行の定期預金や生命保険を解約する場合は銀行や保険会社に成年後見人を求められることが多いでしょう。しかし普通預金から少額の引き出しをすることは、銀行の通帳と銀行印又はキャッシュカードがあればできますので、後見人は必要ありません。

以上のように、「成年後見人を選ぶべきかどうか」という問題は実はそんなに簡単ではないのです。後見人について考えている方はまずこの点を専門家に相談することをお勧めします。ちなみに当事務所でも相談を受けて、「成年後見人を選ぶ必要はありません」という結論になることも多いのです。

年末年始休暇のお知らせ 2019年12月26日

テーマ:事務所からのお知らせ

当事務所は、令和1年12月28日(土)から令和2年1月5日(日)まで年末年始休暇です。

預金の仮払制度を利用しました。 2019年11月19日

テーマ:相続・遺言

先日、今年(令和元年)の7月1日から始まった相続預金の払戻制度(仮払制度)を利用しました。これは相続人が他の相続人の同意なくして亡くなった人(被相続人)名義の預金の一部を引き出すことができる制度です。

この制度が始まる前までは、相続された預貯金を引き出すには、相続人全員の同意が必要でした。具体的には、遺産分割協議書又はそれに類する金融機関の書類に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を提出する必要がありました。そのため同意しない相続人が一人でもいると、預金は1円もおろすことができませんでした。これに対し、今回の仮払制度では、各相続人は法定相続分の3分の1までは一人で請求することができます。例えば、相続人が二人の子で、A銀行に父名義の預金が600万円ある場合、一人の相続人は
600万円×1/2(法定相続分)×1/3=100万円をおろすことができます。
また他にB銀行に預金があれば、この1/6の比率で同様に引き出すことができます。

この制度では、各相続人の法定相続分が重要な意味を持ちますので、請求に当たっては被相続人の相続関係(法定相続分)を証明する戸籍謄本等が必要になります。さらに仮払制度を利用する相続人の印鑑証明書も求められますが、他の相続人の印鑑証明書は不要です。

当職は二人いる相続人の一人から依頼されました。被相続人の支払のため、早急に預金をおろしたかったのに、もう一人の相続人と話し合いができないという事情がありました。当職が遺産整理受任者になり、預金の1/6をおろすことができました。

年末年始休暇のお知らせ 2018年12月27日

テーマ:事務所からのお知らせ

当事務所は、12月29日(土)から1月6日(日)まで年末年始休暇です。

家族信託はこう使う 2018年12月18日

テーマ:相続・遺言

最近、当事務所が関与した家族信託を紹介します。

母親名義の空き家を売却する予定です。しかし売却しやすい物件ではないので、急いで売却すると売却価格が低くならざるを得ません。そこで時間をかけて売却しようと思うのですが、問題がありました。

母親は現在、老人ホームで暮らしています。今も認知症とは言えますが、まだ空き家の売却について判断能力はあります。しかし時間をかけて売却している間に認知症が進み、判断能力がなくなる可能性があります。そうなったら仮にいい条件で売却できる買手が見つかっても、売却自体ができなくなってしまいます。家の名義が母親である以上、売却にあたっては母親の判断能力は不可欠であり、子などの家族が代わって売却することはできないからです。

認知症などで判断能力がなくなった人が不動産を売却するときに法律が予定しているのは、成年後見制度です。母親に成年後見人が選任されれば、売却は可能です。しかし今回のように空き家の売却だけのために成年後見人を選ぶのはあまり得策ではありません。不動産売却のための成年後見人には司法書士などの専門家が選ばれる可能性が高く、そうなると売却が終わった後も、後見が終了するまで=母親が亡くなるまで、後見人の報酬を支払わなければなりません。

また今のところ判断能力があるのであれば、子に空き家を生前贈与することは可能です。そうすれば家は子の名義になり、じっくり売却活動ができます。しかし不動産の贈与は税金が高いのです。贈与税に加え、不動産取得税、登録免許税がかかります。今回も税金が何十万円になるケースでした。

このような成年後見人も贈与も望ましくないケースでも、家族信託を活用するとうまくいく場合があります。

まず信託の委託者、受益者を母親、受託者を長男とします。
次に下記のような信託条項を設定します。
①信託の目的
本件信託不動産の管理及び処分
②信託財産の管理方法
受託者は、本件信託不動産を管理、処分することができる。
③信託の終了事由
本件信託は、本件信託不動産を売却したときに終了する。

そして信託を原因として空き家の名義(登記)を母親から長男に移転します。
このようにすると今後は長男のみが売却活動をでき、母親の判断能力は問われません。また税金も少なくてすみます。なぜ税金が少なくてすむかというと、信託は名義(形式)のみが移転し、利益(実質)は移転しないからです。その証拠に長男が売却をしても売却代金は母親に帰属します。そのため贈与税、不動産取得税が発生しません。登録免許税はかかりますが、贈与の5分の1以下です。税金が少ないことが信託の最大のメリットだと思います。

近年、家族信託ということばを聞くことが増えてきましたが、私が実際に関わるのは今回のようなケースがもっとも多いです。
なお、今回の家族信託の司法書士報酬は10万円(税別)でした。

夏期休暇のお知らせ 2018年08月08日

テーマ:事務所からのお知らせ

当事務所は、8月13日(月)から16日(木)まで夏期休暇です。

ゴールデンウイーク休暇について 2018年04月27日

テーマ:事務所からのお知らせ

当事務所は、4月28日(土)から5月6日(日)まで休業します。5月7日から通常営業になります。

失踪宣告を利用した相続が終わりました。 2018年04月17日

テーマ:相続・遺言

昨年、このブログで相続人が行方不明の場合の相続について解説しました。

相続人の行方不明⑴
相続人の行方不明⑵
相続人の行方不明⑶

この中の失踪宣告を利用した相続登記が終了しましたので、ご紹介したいと思います。

Aさんのお父さんが亡くなられ、相続人はお母さんとAさん、Aさんの弟Bさんの3名でした。このBさんが30年前に失踪し、音信不通でした。ところが8年前に大阪市の区役所から、Bさんが大阪に住民票を移したという連絡があったので、さっそくAさんたちは大阪の住所地を訪ねました。しかしすでにBさんは引っ越していました。

本来であれば、Aさんのお父さんの不動産の名義をAさんに変更(相続登記)するにはBさんの実印の押印と印鑑証明書が必要です。しかしこのケースではどう考えてもそれは無理でした。他方、Bさんが住民票を移転してから8年が経過しているので、普通失踪宣告が適用できそうです。もし失踪宣告が認めれればBさんは死亡したものと見なされるので、お父さんの相続人はお母さんとAさんの2名になります(Bさんには子供はいません)。

そのような説明をしたところ、当職はAさんから失踪宣告申立書の作成、提出を依頼されました。そこで昨年(平成29年)の6月に家庭裁判所に申立書を提出しました。Bさんの本籍地は名古屋市ですが、最後の住所地は大阪市なので、管轄(提出先)は大阪家庭裁判所です。

すると8月に家庭裁判所から、「裁判所自身の調査が完了した」という連絡があり、Aさんとお母さんの陳述書、お父さんの相続関係説明図、Bさんの財産目録の追加を求められましたので、同月、提出しました。

その後、11月になって官報公告の費用の請求書が届きました。これは失踪宣告をするには官報(政府発行の日刊紙)に「失踪に関する届出の催告」という記事を掲載し、3ヶ月が経過することが必要とされているからです。これを官報公告といい、今回は4298円でした。官報公告は11月に行われたはずです。

翌年(平成30年)の1月末に裁判所から、Bさんの戸籍謄本と戸籍附票を再度、取り寄せた上で、Aさんの照会書といっしょに送付するよう連絡がありました。そして2月5日付でBさんの失踪宣告の審判が出されました。

失踪宣告の審判は2週間の経過で確定するので、確定後、審判書を本籍地のある名古屋市の区役所に提出しました。そして3月にBさんの失踪宣告が記載された戸籍謄本を得ることができました。その戸籍謄本を添付して相続登記を申請し、この4月に不動産の名義をAさんにする相続登記が完了しました。

依頼から登記完了まで10ヶ月でした。当職やAさんが大阪まで行くことはなく、手続はすべて電話と郵送で行われました。

年末年始休暇のお知らせ 2017年12月27日

テーマ:事務所からのお知らせ

当事務所は、12月29日(金)から1月4日(木)まで年末年始休暇です。

知られていない代襲相続 2017年12月15日

テーマ:相続・遺言

夫が亡くなった妻から「夫には子がいない。兄弟はいたが、みんな亡くなっている。もちろん父母もだいぶ前に亡くなった。」という相続の相談があったとします。このような事例で相続人は誰になるのでしょうか。

相続人の順位は法律で決まっています。配偶者は常に相続人になりますが、子、父母、兄弟姉妹はこの順番で相続人になります。そのため子がいなく、父母、兄弟姉妹が死亡していれば、配偶者だけが相続人になると考えている方もいます。

しかし法律には相続人になるはずだった兄弟姉妹が先に亡くなった場合は、その兄弟姉妹の子が相続人になるとしています。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と言います。ちなみに兄弟の子(代襲者)も亡くなっている場合は、さらなる代襲相続は認められていません。兄弟姉妹に再代襲(さいだいしゅう)はないのです。

したがって最初の例では、兄弟の子が存命であればその子も相続人になります。最近は相続人の順位について知っている方も多く、子がいなければ(多くの場合、父母は先に亡くなっているので)、兄弟が相続人になることをご存じです。しかしそのような方でも代襲相続を知らない方がいます。「子がおらず、兄弟もみんな亡くなった」という事例には注意が必要です。

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