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相続、遺産整理について

行方不明の相続人がいる場合はどうしたらよいか。

相続が発生し、亡くなった方(被相続人)の財産の名義を相続人に変更するためには、遺言書がない限り、遺産分割協議書という書類に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を提出する必要があります。ということは相続人の中に一人でも行方不明の者がいると、預金を引き出したり、不動産の名義変更をすることはできなくなります。そこでこの場合は何らかの対処をする必要があります。

まず気をつけなければならないのは、一般に「相続人の行方不明」と言われているケースの中にはむしろ「連絡先不明」というべき場合が多いということです。つまり長年、交流がないため、住所も電話番号も知らない、さらに生きているかどうかも知らないという場合があります。この場合は戸籍謄本と戸籍の附票を取得すれば少なくとも生死と住民票上の住所はわかります。当事務所の経験でも戸籍謄本と戸籍の附票を取得し、住民票上の住所に手紙を出したところ、相手の方から連絡があったということが何件もありました。

問題はこのような「連絡先不明」ではない場合です。すなわち戸籍上は生存しているにもかかわらず、住民票上の住所には居住していない場合です。このような場合に対処するための制度が民法第25条以下に定められている①不在者の財産管理人と②失踪宣告です。

民法は、第25条で家庭裁判所は「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という)」のために財産管理人を選任できるとし、第30条第1項で「不在者の生死が7年間明らかでないときは」家庭裁判所は失踪宣告をすることができると定めています。前者が不在者の財産管理人の制度、後者が普通失踪宣告の制度です。つまり不在者の生死が7年間明らかでないときは失踪宣告、それ以外のときは不在者の財産管理人を選任するという制度分担になっています。ちなみに30条第2項は特別失踪宣告を定めていますが、この説明は省略します。

例えば相続人の一人が生死不明のため遺産分割協議ができない場合、行方不明になったのが3年前であれば失踪宣告は請求できないので、まず不在者の財産管理人を選任し、遺産分割協議をすることになります。ただし不在者の財産管理人は原則として保存行為と管理行為しかできないため、遺産分割協議という処分行為をするには家庭裁判所の許可が必要です。そして遺産分割協議について家庭裁判所の許可を得るには、原則として不在者の法定相続分を確保することが必要です。不在者の相続分を放棄するというような遺産分割協議は認められない可能性が高いです。そこで例えば相続財産が3000万円で、不在者の法定相続分が3分の1であれば、原則として不在者の財産管理人が1000万円を管理することになります。

では不在者の財産管理人はこの1000万円をいつまで管理しなければならないのでしょうか。不在者の生死が7年間明らかでないときは普通失踪宣告が請求できます。そこで不在者がさらに4年間、生死不明であれば失踪宣告が請求できることになります。失踪宣告が認められれば、不在者は死亡したものとみなされます(民法第31条)。その結果、不在者の相続が開始しますので、財産管理人は相続人に管理している財産を引き渡すことになります。このように不在者の財産管理人の制度と失踪宣告の制度を組み合わせることもできます。

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