テーマ:相続・遺言
先週、「エンディングノート」という映画を見ました。この映画の影響もあって、現在、エンディングノートがちょっとしたブームのようです。
従来、亡くなる人が書き残すものとしては、遺言が挙げられました。しかし実は遺言で法的効力が認められる事項は相続分の指定や遺贈など、かなり限られているのです。財産の分け方がほとんどを占めます。それ以外のこと、例えば葬儀の進め方などは遺言に記載することはできますが、法的効力がありません。そのため法律家は(私も含め)遺言に書くことを勧めてきませんでした。
エンディングノートがブームとなったのも、遺言では自分の思いを十分、表現できないということが知られてきたからではないでしょうか。エンディングノートには、葬儀の進め方はもちろん、残された家族へのメッセージ、自分の人生の振り返りなども書くことができます。要するに自分の書き残したいことが自由に書けるのです。
ただし、エンディングノートには法的効力はありません。ですから法的効力が必要なら遺言、不要ならエンディングノートという使い分けをするのがいいと思います。
テーマ:自営業者、会社
先回の町工場の破産の続きです。
自営業者の破産特有の問題として、リース物件の返還があります。自営業者は事業に必要な機械や什器をリースしていることが多いです。破産するのであればもちろんリース料の支払いを停止しますので、リース会社に債権届出書を提出してもらうとともに、リース物件の返還の打ち合わせをします。普通はリース会社の取引業者に物件を回収しに来てもらいます。そして返還後、リース会社から受領書をもらい、裁判所に提出します。ただ物件の価値が低く、リース会社が回収するとむしろコスト倒れになるような場合は、リース会社がリース物件の所有権を放棄することもあります。この場合は物件を返還する必要がありません。
以上が通常の場合ですが、今回のように事業を第三者が継続するような場合は、その第三者がリース物件を買い取って、そのまま使用することも可能です。その場合は買取価格の打診をすることになります。
テーマ:自営業者、会社
町工場を経営している個人事業主が自己破産し、工場は知人が引き継ぐという案件を依頼されました。
まず考えなければならないのは、工場内の機械、器具などをいくらで引き継ぐかです。これは機械の販売業者に査定書(見積書)を依頼し、その価格を参考に売買価格を決定しました。相場とかけ離れた価格は裁判所が認めませんから、査定書(見積書)は必要不可欠です。ちなみに破産費用はこの売買代金の一部を充てる予定です。
またこの工場は貸し工場(賃借物件)ですが、保証金を差し入れており、解約すれば、保証金が返還される契約になっています。そうすると賃貸借契約は解約するしかありません。そこで5月いっぱいで解約し、6月からは工場を引き継ぐ知人が新たに賃貸借契約を結ぶことになりました。
個人事業者が廃業して、破産する場合は、現在でも破産同時廃止(同廃)事件の可能性がありますが、今回のように工場を第三者が引き継ぐような場合は、管財人選任(管財)事件になるはずです。特に今回の方は保証金の返還によりそれなりの額の預金があるので、自由財産の拡張をするためにあえて管財事件として申し立てる予定です。
テーマ:社会福祉
高額所得者であるお笑い芸人の母が生活保護を受給していたことが大きく報道されました。しかし不思議なことに、生活保護法の条文を引用した解説はほとんどありません。
問題の核心は、生活保護法第4条に違反していたかどうかです。
(保護の補足性)
第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
生活保護は、補足性が要件になっています。すなわち生活保護は第1項にあるように、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用しても最低限度の生活の維持ができないときに認められます。そして第2項で、扶養義務者の扶養は生活保護に優先するとしています。ちなみに、ここで言う「民法」とは、第877条のことで、その第1項では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。そうであれば、子に別居する母親を扶養できるほどの高額の収入があり、援助が可能であれば、子の扶養義務が優先し、生活保護は認められないと言わざるを得ません。法律の解釈としては、こうなるはずです。
ただしそのようなケースは例外中の例外でしょう。子が親に月10万円以上を送金できる家庭は普通、ありませんので、通常の生活保護受給者には何の関係もない話です。
テーマ:社会福祉
現在、国会に提出されている「子ども・子育て新システム」法案の解説で、児童福祉法第24条がよく取り上げられています。同条は、「市町村は…児童を保育所において保育しなければならない」と規定していることから、市町村の保育実施義務を定めたものと言えます。別の言い方をすれば、市町村はお金を出せばいいのではなく、保育という現物を給付しなければならないということで、これを福祉の現物給付方式と言います。介護保険は違います。例えば、介護保険法第41条は「市町村は…要介護被保険者に対し…居宅介護サービス費を支給する」としています。これによれば、市町村は介護という現物を給付するのではなく、サービス費というお金を出すことになっています。これを福祉の現金給付方式と言います。
かつて医療、福祉の多くは現物給付でした。それが介護保険法で高齢者福祉が現金給付に転換し、それをモデルに障害者自立支援法で障害者福祉も現金給付になりました。そして今、児童福祉の分野に現金給付を導入しようとするのが、「子ども・子育て新システム」です。現物給付は福祉を行政の責任で行う方式であり、現金給付は行政が福祉に責任を負わない方式とも言えます。そのため「子ども・子育て新システム」は「公的保育を解体する」「保育を保護者の自己責任とする」と批判されています。
テーマ:成年後見
昨日、80代の女性と任意後見契約をしました。任意後見契約とは、今は元気だけれど、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ代理人(任意後見人)を決めておく契約です。契約の効力は、判断能力の低下後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で生じます。
私はこの任意後見はなかなかいい制度だと思っています。身近に親族がいない高齢者の方は、将来に不安を持つとともに、なるべく親族に迷惑をかけたくないと考えています。そのような方が任意後見を利用すれば、将来の安心を得ることができます。他方、契約の効力は、判断能力の低下後、任意後見監督人を選任した時点で生じるので、それまで任意後見人の報酬は不要です。けして任意後見契約の翌月から報酬が発生するのではありません。この方もそこが契約のポイントとなりました。
テーマ:債務整理全般
5月9日、NISグループ(株)が民事再生の申請をし、倒産しました。ネオライングループの倒産としては、昨年のSFコーポレーションに続き、2件目です。
私は、昨年の11月にNISグループから、「過払金の5%の返還」という提案を受け、「そんなに経営が厳しく、過払金の5%しか返還できないのであれば、早く破産などの法的整理を行うべきでしょう。他のネオライングループも同様ですが、そのような会社が存続しているのは非常識です。」とブログに書きました。この考えは今も変わっていませんので、その意味では納得しています。
ちなみに上記の件は、依頼者が早期解決を希望したため、7%弱で和解をし、今年の2月に入金されました。私としては不本意な和解でしたが、入金が5月9日以降だったなら7%弱の返還も無理でしょうから、少し気分が晴れました。
テーマ:社会福祉
「大阪維新の会」の大阪市議団は、5月市議会に提出予定だった家庭教育支援条例案を白紙撤回しました。発達障害は親の愛情不足が原因などというとんでもない内容でしたから、批判が続出したのも当然です。
発達障害の法律上の定義は、発達障害者支援法第2条にあります。そこには「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」とあります。発達障害は、身体障害、知的障害、精神障害の3障害に比べ、認識が遅れており、発達障害者支援法が施行されたのも2005(平成17)年でした。それでもそれ以降は、発達障害は法律上も「脳機能の障害」であることが明示されました。そして同法を受けて、障害者基本法は障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者」と変更しました。つまり3障害との関係では、発達障害は精神障害に含まれることになりました。
このように考えると、発達障害を脳機能の障害(精神障害)ととらえていない家庭教育支援条例案は、発達障害者支援法や障害者基本法にも反するものと言えます。
テーマ:過払金返還請求
過払金の返還請求権の時効期間は原則として取引の終了日から10年です。したがって最終の借入日又は返済日から10年を経過していれば時効により過払金は請求できません。逆に10年を経過していなければ請求できます。
よく「10年が経っているかがわからない」というご意見をいただきますが、それは貸金業者から取引履歴を取り寄せればわかるし、取り寄せない限りわからないことです。当事務所では、完済後の過払金の返還請求の報酬は、返還された額の21%(税込)ですので、時効によって過払金が請求できなければ、費用がかからないというシステムになっています。したがって「10年が経っているかがわからない」方でも、費用の心配なく、依頼していただけます。
テーマ:社会福祉
私が「社会福祉の介護保険化」ということばを知ったのは、鹿児島大学法科大学院の伊藤周平教授の一連の著作からです。それはこのような内容です。
従来の社会福祉は、①施設補助(現物給付)方式、②市町村を通した入所・利用、③応能負担という特徴があったが、2000(平成12)年から施行された介護保険法により、高齢者福祉は①利用者補助(現金給付)方式、②直接契約による入所・利用、③応益負担に転換した。
この介護保険法をモデルにして、障害者福祉の分野で2006(平成18)年から障害者自立支援法が施行された。
そして児童福祉を介護保険や障害者自立支援法と同じ仕組みに転換しようとするのが、現在、国会に提出されている「子ども・子育て新システム」法案である。
このような高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉に共通する「社会福祉の介護保険化」という説明はとても新鮮でした。このように考えると、政府がいったんは障害者自立支援法の廃止を約束しながら、それを反故にしようとした理由もよくわかります。障害者自立支援法の廃止と「子ども・子育て新システム」の制定は、理念として矛盾するからです。
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