テーマ:成年後見
先日、任意後見制度を利用するといくらかかるのかというご質問を受けました。任意後見とは、判断能力が低下する前に任意後見契約を締結し、その後、判断能力が低下し、任意後見監督人が選任された時から後見人が活動を始める制度です。だれが後見人になり、その報酬がいくらかは任意後見契約で決めます。これらをすべて家庭裁判所が決定するのが法定後見です。
私が相談を受けた方は80歳代の女性で、身近に任意後見人の候補者がいないので、司法書士が任意後見人になることを希望されていました。先に述べたように後見人の報酬は任意後見契約で決めることであり、一律ではありません。しかし司法書士などの専門家であれば毎月の報酬は2~3万円が目安です。またそれとは別に任意後見監督人の報酬も必要で、これが月1万円くらいではないでしょうか。そうすると毎月の費用は3~4万円ほどになります。
テーマ:過払金返還請求
亡くなった親族がサラ金から借金をしていた、というのもよくある話です。この場合、取引履歴を取り寄せてみて過払いになっていれば、相続人から過払金の返還請求ができます。普通は相続人の一人が過払金を相続し、その方が原告になります。書証として戸籍謄本や遺産分割協議書が増えるだけで、他は通常の過払いと同じです。私も何回か扱ったことがあります。
これに対して、過払いにならず、債務が残るような場合は相続放棄を検討します。ただ、相続放棄は、債務が残っていることを知ってから3ヶ月以内であればできますので、あせってする必要はありません。まずは取引履歴を取り寄せて、再計算をすべきです。
テーマ:社会福祉
矢部武『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』(新潮文庫、2012年)を読みました。タイトルに惹かれて読むことにしましたが、たいへんおもしろかったです。
著者は日米の両国を長年、取材しているジャーナリストです。近年、マスコミで孤独死がよく取り上げられます。しかし著者は「一人で亡くなることが問題なのではない」と主張し、アメリカを例に出します。著者によれば、アメリカは一人で生きることを前提とした社会であり、それゆえ政府やNPO、企業などが連携し社会全体で独居者の孤立や孤独死を防ぐ支援活動に取り組んでいるとのことです。そしてたとえ一人で亡くなったとしても、社会的なつながりがあれば、孤独死ではなく「自立死」だと言います。
私がたいへん興味を持ったのは、アメリカでは低所得層に対する国の援助が日本よりもずっと充実していることです。アメリカでは政府支援を受けた独居者専用住宅もあれば、食料品を買うためのフードスタンプ(食料クーポン)の支給もあります。また生活保護制度はむしろ日本より受給しやすいとのことです。やはり公的援助もなしに、家族や地域の絆だけを強調しても問題は解決できないのです。
テーマ:成年後見
昨日は愛知県司法書士会館で行われたリーガルサポートの会議に出席してきました。リーガルサポートとは、成年後見業務に積極的に取り組む司法書士で構成している団体で、正式名称を「公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート」と言います。都道府県ごとに支部があり、私は愛知支部に属しているわけです。
昨日の会議は、地域業務支援委員会ブロック会議と言って、要するに後見人をやっている司法書士間の情報交換、経験交流でした。私も司法書士歴13年になり、登記や債務整理で初めて聞く話というのはほとんどありません。しかし成年後見は初めて聞く話もいっぱいあり、こういう会はありがたいです。
テーマ:社会福祉
社会福祉の世界では、応益負担と応能負担という用語がよく使われます。応益負担とは、福祉制度を利用した時間(利益)に応じて費用を負担することです。これに対し、応能負担とは、利用者の能力(要するに所得)に応じて費用を負担することです。
従来の社会福祉は応能負担でした。それが平成12年(2000年)の介護保険の導入で応益負担に方向転換しました。介護保険は利用者が利用料の1割を負担するという応益負担の制度です。その後、平成18年(2006年)から施行された障害者自立支援法で障害者福祉の分野にも応益負担が導入されました。しかし障害者はその障害ゆえに福祉制度の援助がなければ日常生活を営むことができません。それを「利益」というのはそもそもおかしなことです。私は社会福祉は応能負担であるべきであって、応益負担はなじまないと思っています。
障害者自立支援法は障害者から大きな批判を浴び、全国で違憲訴訟が提起されました。また民主党も障害者自立支援法の廃止を選挙公約にしました。その結果、平成22年(2010年)に国と違憲訴訟原告団・弁護団との間で基本合意が成立しました。この基本合意文書には次のような記述があります。
「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間しての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる。」
ところが政府は現在、この基本合意を反故(ほご)にしようとしています。障害者自立支援法の名称だけを変えて、重要部分を温存しようとしています。これは絶対に許されないことです。
テーマ:不動産担保、住宅ローン
先日、住宅ローンの遅延損害金について相談を受けました。たとえば住宅ローンの残高が1000万円、毎月の返済が10万円、損害金の利率が年14.5%とします。この場合、損害金の額は1000万円の14.5%なのか、10万円の14.5%なのかという問題です。
これは期限の利益を喪失したかどうかで異なります。つまり今まで返済が遅れたことのない人がたまたま1ヶ月だけ遅れたとします。このときは10万円に対して年14.5%の遅延損害金がかかります。計算すると約1200円になります。なぜ10万円に対してかというと、この人は毎月10万円を分割して払えばよいからです。このように分割払いが認められていることを「期限の利益」といいます。
しかし返済が何ヶ月も行われないと、契約により一括払いを求められることになります。これを「期限の利益の喪失」といいます。この時点で1000万円を一括して支払う義務が生じます。そのため遅延損害金は1000万円に対して年14.5%になります。月当たり約12万円です。
このように遅延損害金は期限の利益が喪失したかどうかで、天と地との差が生じます。
テーマ:相続・遺言
「相続を争族にしないために」などと言って遺言を勧める記事がありますが、私はこのような言い方はしません。それは遺言が実際にどのように役に立つかが明確でないからです。では、遺言で相続財産の分割方法を決めることにどのような意味があるのでしょうか。
それは他の相続人の実印が不要になるということです。遺言のない相続では、何をやるにも相続人全員の実印の押印と印鑑証明書の提出が必要です。逆に言えば、相続人全員の意見が一致しなければ何もできません。不動産の名義変更はもちろん、銀行預金の引き出しもできません。これに対し、遺言があれば、他の相続人の印鑑はいらず、財産を相続した相続人のみで手続を進めることができます。
これが遺言の存在意義です。ですから相続人全員の実印がもらえないような事情がある場合、遺言は有効なのです。ただそれ以上に、遺言に相続人の紛争を防止する効果があるかと言われれば、私は疑問です。人間の感情は紙切れでは抑えきれないものです。
テーマ:自己破産
私はこれまで生活保護を受給している方の自己破産の申立を何度も行ってきました。その多くは法テラス(正式名称は「日本司法支援センター」)という国が設立した機関の法律扶助という制度を利用したものでした。これは自己破産の費用を法テラスが立て替えて弁護士や司法書士に支払い、その後、本人が法テラスに立替金を分割で返済していくという制度です。
これが平成22年(2010年)から、生活保護の受給者は法テラスに対する返済義務が免除されるという扱いになりました。要するに生活保護受給者は要件を満たせば自己破産の費用を法テラスが負担する=無料で自己破産の申立ができるようになりました。生活保護の受給者の方から自己破産の相談を受けると、最初に聞かれるのはいつも「いくらかかるのか」でした。それが今では「法テラスを利用できれば無料です」と答えられるようになりました。
テーマ:自営業者、会社
名古屋地方裁判所民事第2部破産係より、本年3月1日付をもって「同時廃止基準」を改訂したと愛知県司法書士会に連絡があったので、さっそく新しい基準を見てみました。そうしたら債務者が個人事業者の場合は、「原則として、事業廃止前2年分の税務申告がなされており、その申告書及び会計帳簿が保存されていること」という条件が新しく加わっていました。
これからは自営業者の方から自己破産の相談を受けた場合、その場で2年分の確定申告書と帳簿が保存されているかを確認しなければなりません。そうしないと破産同時廃止で処理できるか=破産費用がいくらかかるかが判断できませんから。
テーマ:成年後見
2月22日放送のNHK福祉ネットワーク 「親のおカネは誰のもの?-成年後見制度-」を見ました。全体として、介護者が親のお金を使うこと一般と、親族後見人が被後見人である親のお金を着服することが明確に区別されておらず、すっきりしない印象を持ちました。現在、大きな問題となっているのはあくまで親族後見人が裁判所から認められた代理権を悪用して、被後見人の預金などを使い込むことです。子どもが親のお金を当てにすること一般ではありません。
番組でも紹介されましたが、親が介護している子に対して、自分のお金を使うのを許すことは何の問題もありません。この点を視聴者が誤解しないか心配です。私はもっと後見人による着服例を具体的に紹介すべきだったと思います。
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